Manhattan Closet Diary90% of me is you

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蛇。 22:38

 

女はタバコに火を着ける男の姿を眺めていた。





彼とここに来るのは何度目だろう。











2人が勤めている会社がある駅から3駅ほど離れた、人目に付かないこのホテルに来るようになってからもう数年が経とうとしている。




最初の頃は、先生の目を盗んで授業を抜け出し、仲の良い友達数人で街に繰り出して遊んでいた学生の頃の様な、ちょっとした逃避行気分だった。










隣の部署で働いていた男が食堂で声をかけてきたあの日の事を女は思い出していた。







周りの女性の同僚からはちょっとした「イケメン」で通っていた彼だったので、もちろん女は悪い気はしなかった。



その数日後、2人で食事に行き、なんとなくこのホテルに来たのが最初だった。








それからというもの、仕事終わりに2人で何度もここを訪れた。



2人で会う間隔は日に日に短くなり、仕事の休み時間でさえ来たこともあった。












電話はしない。メールもしない。






これが2人の「約束」だった。






男からそう言われたのだが、社内同士ということで、女はそれも仕方ないと納得していたし、暇つぶし気分でもあったのでそれを守る事は苦ではなかった。







しかし、男の理由はそれだけではなかった。



女が男に妻子がいる事を偶然、取引先の人間から耳にしたのは、最初にここへ来た時から1年半が経とうとしている頃だった。










思えば、別に学生時代も男に困る事はなかったし、社会に出てからも恋愛に不自由した事も無かったが、ふと気づくと心底相手を愛していなかったこと、そして、自分から誰かを好きになったことが無い自分がいた。

たとえ別れ話を切り出されても、涙を流した事なんて今まで一度も無かった。










しかし、男の真実を知ってから自分の中で何かが変わった。


というよりも、男の真実が女に自分の変化を気づかせたのだ。













その日、女は泣いた。


夜が明けるまで泣き続けた。













女は自分がその男を愛していることを確信した。

今まで自分を通り過ぎた男の誰よりも。

そして、それは女が初めて自分から好きになった男だった。












次の日、2人で食事をしながら女は男にその旨を伝えた。





「ありがとう」






笑顔で話す男の答えはその一言だった。








それ以上に女は男を問い詰めなかった。


いや、問い詰める事ができなかった。









彼を失うのが怖い。









それならば、世間の目を欺きながらでも、女は男と少しでも長く一緒に過ごせる事のほうが幸せだった。








しかしその後、男の変化に女が気づくのも時間の問題だったのだ。




毎日のように会っていた時間が、週に1度になり、さらには月に1度ぐらいになっていった。





それでも、女は例の「約束」を守っていた。





もちろん職場で顔を合わすことはあるものの、何気ない会話や次の予定を話す事もない。


いつしか、女にとってこの「約束」を守る事自体が男と繋がっていると思える唯一の手がかりになっていた。

















そして、今日、こうして会うのは2ヶ月ぶりだった。






男は吸い終わったタバコをもみ消し、女のほうに視線を向けた。





女はその男の眼差しが出会った頃のあの頃と同じではなく、例えるなら、どこか遠いところを見ているように感じた。





それは自分ではなく、家族なのかもしれないと女は考えていた。





そんな風に感じるのは今に始まった事ではない。


そう、想いを告げたその日から変わっていたことを女は知っていた。











ふと、男は女を後ろから抱き寄せた。



しかし女はその温もりに嬉しさではなく悲しみを感じたのだった。












女はゆっくりと目を閉じながら、男にこう言った。























「ねえ、エチオピアンジャズファンクでも聴かない?」

















背中で感じる男の体が少し揺れた。





男は無言のままだった。












「そっか。エチオピアンジャズファンクは聴かないのね。」





女はフッと笑いながら立ち上がり、素早く洋服をまとい無言のまま部屋を後にした。











ホテルを出て、女は父から買ってもらったエルメスのバックから I pod を出し beats のDR.DRE モデルのイヤホンを耳にした後、背筋をピンと伸ばし歩き出した。





女の表情には曇りは無く、その眼差しは、さっき男の見せたそれではなく真っ直ぐと前を向いていた。






beatsから流れてくる重厚な音楽はもちろん…。





























というわけで、こんなもしもの場合でも大丈夫。



QUANTIC の エチオピアが誇るマルチ楽器奏者MULATU ASTATKE楽曲のMIX。 

QUANTIC は前回もそうでしたが「こんなんもありでしょ?」という音楽を私にちょうど良いタイミングで教えてくれます。




嫌いじゃないです。







コチラから聴けますので。





























manhattan closet















































































| MUSIC!! | comments(2) | trackbacks(0) | posted by m-closetm -
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Comment








こちらのブログのファンでたまに拝見させてもらっています。
小説家じゃないですか。1枚のCDからこんなにストーリーを膨らますなんてスバラスィ。
posted by a girl | 2010/04/14 5:21 PM |
a girl 様
コメントありがとうございます。
小説家なんてとんでもなく、ただの妄想癖でございます…。
今後とも宜しくです!
posted by manhattan closet | 2010/04/15 6:53 PM |
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