5月某日 朝、店前の掃除中、よれよれのスーツに金髪ロン毛、スリック・リック並の無数のシルバーアクセサリー、痩せ型でくわえタバコ、見るところ20代前半の若者に道を尋ねられる。
『この辺にホストクラブある?』
一瞬固まる私。ホストクラブ?今は午前11時。あっても営業はしていないと思うし、遊びに行くには早すぎる。遊びに行くにもその若者は男。楽しくは無いだろう。なるほど、面接か…。無理やり合点をさせる。
…ちょっと待て。「なんでタメ口やねん!」少しイラッとするも、接客業では日常茶飯事。サラリと大人の対応。
「おそらく、この辺には無いでしょう。道玄坂のほうに行けば可能性はなくも無いが、新宿へ行ってみてはいかかでしょう。」
”ありがとう”の一言もなく掃除したばかりの地面にタバコを捨て、背中を向け立ち去る若者。
「ハトの糞よ!彼の頭上に落ちたまえ!」と念じつつ、デスノート行きの一人目に決定。
5月某日
午後2時を過ぎた頃、口調の丁寧な人柄の良い、見るところ60歳代のご婦人が来店。
『主人が集めていたクラッシックのレコードを買い取っていただけるところを探しているのですが…。』
来店前に立ち寄った喫茶店で同じ事を尋ね、宇田川町を紹介されたとのこと。
マンハッタンではクラッシックの買取をやっていない旨をお伝えし「disk UNION」をご紹介。地図を書き詳しく御説明。
お話を少し聞くと、数年前に他界したご主人が集めていた思い出の大事な品というお答え。邪魔なので買い取りに出したいとの事も付け加えられる。
…いまいち筋の通っていない少しばかり矛盾したお話に、「?」となるも、お互い笑顔でお別れ。
すぐ後「disk UNION」がクラッシックの買取をしているかどうかを調べなかったことに気づきネットで検索。
少し切ない気持ちの中、買取をやっていないほうが良いような…、との勝手な考えに襟を正す。
無事、買取OKを確認。
なんとなく外に出て振り返るも、ご婦人の背中すら見えず。相当速い歩くスピードに「そんなに急いでまで...」と、また切なくなる。私自身のレコードコレクションはどうしようかと風呂に入る度に考えるようになる。
5月某日お店前のローソンの入り口にて休憩中、度々見かける、ところどころ顔に薄い刺青、鼻に棒のようなピアス、耳には丸い大きなピアス、ケミカルデニム上下の風貌、年のころ50歳代のおっちゃんに話しかけられる。
『俺、どっかおかしいとこない?』
まったく意味がわからない。目つきといい佇まいといいかなり怪しい為、私に話しかけているのではないと信じ、とりあえず無視をする。
おっちゃんは一歩近づき、再び、
『俺、どっかおかしいとこない?』
また無視をする。
繰り返されること、さらに2回。距離も縮まり、その間約1メートル。完全に私に話しかけているのは間違いないと確信させられる。白旗を上げる思いで返答。
「なにがですか?」
すると、
『あんた分からへんの?ホンマに分からへんの?』
と、おっちゃん。
またしても、この会話が繰り返されることさらに2回。
ヤバい状況。長期戦の様相を呈してくる。正直おかしいところは山ほどある。全て挙げていったら「とくダネ!」が始まってしまう為、ここは一発で決めようと決心。これぞと思った点を思い切って返答。
「あの〜、鼻のピアスとかですか?」と私。
『違うわ!そんなこと聞いてないがな!』
とおっちゃん。
...まったく意味不明のため、降参し瞑想状態に入る。
すると、おっちゃん、最終的に一言、
『あんた、最低や!』
と、捨てゼリフを吐かれ、一人取り残される。
私の知らない「最低」の他の意味があるのかとネットで調べるも、そんな意味があるはずも無くさらに分からなくなり迷宮入り。
「犬のウンチよ!彼の足元に現れたまえ!」と念じながら、デスノート行き2人目が決定。
5月某日自他共に認める綺麗好きな私。ウォッシュレットのある、近所の駐車場のトイレに向かう。
限界も近づいてきていた為、無心でトイレの扉の前までたどり着く。勢いよくドアノブを引こうとした瞬間の出来事。開いた扉から、なんと、あの『吉川晃司』登場。あまりの登場の仕方に気を失いそうになるも当初の目的を果たす為すばやく個室へ。
落ち着きを取り戻し、『生吉川』にテンションMAXになる。用事を済ませた後のお尻へのシャワーをしながら、以前動画サイトで見たライブシーンを思い出す…。
…ご覧のとおり、1分30秒後に飛び出す、
『いつまで少女でいる気なのシャワー!!』
を、思い出しながらのお尻へのシャワーに興奮。
さらに続く、
『部屋にこもって夢見るのシャワー!!』
にいたっては、今、私が置かれている状況そのままであることにさらに興奮。これぞデジャブ。さすがモ二カ。
そして「吉川晃司」は面白いということを再確認。
…というわけで、この日までに起こった、嫌な出来事や切ない出来事は、「吉川」のおかげで全部まとめてデスノートと共にこのトイレで水に流すことができた…。そのため、スッキリした気分で上半期が終了したのである。
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